フランソワ・トリュフォーが監督・脚本だけでなく俳優として演技もしていた「野生の少年」

 フランソワ・トリュフォーの映画です。

 昭和45年(1970年)製作・日本公開の「野生の少年」。日比谷・みゆき座のプログラムの表紙です。1970年代になっては珍しいイラストの表紙です。モノクロ映画だったので、カラーの表紙にするためにイラストにしたのかもしれません。

 表紙を開きますと...

 「野生の少年」は、フランスの森に捨てられ、野生で育った少年を人間の世界の住人へと教育していく物語です。中央がその「野生の少年」、そして左側、教師となるイタール博士役を演じたのは、監督のフランソワ・トリュフォーその人であります。

 この映画、何よりも映画作家トリュフォーの作品ですから、次のページに出てくるのはトリュフォーのインタビューです。

 その次のページもトリュフォーです。

 この時代は、映画作家の時代といってもいいのかもしれません。監督が映画の話題の中心にいました。そして、スタッフ・キャストの紹介です。

 トリュフォーはこの当時、既に大監督で、ジャンヌ・モローカトリーヌ・ドヌーヴジャン=ポール・ベルモンドといったフランス屈指のスターとともに映画も撮っていますが、こちらは地味な顔ぶれな小品と言って映画です。

 「野生の少年」を演じたのは、こんな少年です。

 一般から選ばれた無垢で愛らしい少年です。一方、右ページ下の写真が本物の「野生の少年」ですが、こちらは本当にワイルドな野生児(歯が凄い)。森で育った「狼少年」そのもので、ちょっと怖い感じです。

 最後に裏表紙...

 共に歩く博士と野生の少年。であると同時に監督と演技の素人、映画の中でも外でも師弟関係といえそうです。

 静謐で地味な小品ですが、トリュフォーの作品ですから、きちんとDVDになっています。

 原作はジャン・イタールの「アヴェロンの野生児」で、こちらも出版されていたようです。
アヴェロンの野生児 (1975年)

アヴェロンの野生児 (1975年)

 プログラムのトリュフォー・インタビューの訳・構成を担当している山田宏一氏は、トリュフォーゴダールなどヌーベルバーグの映画作家との交友が深く、こんな本を出しています。
トリュフォーの手紙

トリュフォーの手紙

フランソワ・トリュフォー映画読本

フランソワ・トリュフォー映画読本

 で、ウィキペディアによりますと、この映画を見て、スティーヴン・スピルバーグトリュフォーに「未知との遭遇」のフランス人科学者役をオファーしたんだそうです。こちらの映画... その意味では、「野生の少年」はトリュフォーにとって本格的な俳優デビュー作ともいえる作品でした。