昭和のコメディアン、金語楼が表紙の昭和10年のチラシ。円谷英二が本名の英一を名乗っていた頃

 我が家で発掘したもの中で、ひょっとしたら、最も古いものかもしれないチラシです。

 三つ折のチラシの表紙部分で、戦前ですから横書きは右から読みます。頭の見出しが「近日公開の金語楼出演第1回オール・トーキー」です。写真の人物は、昭和の人気落語家にしてコメディアンの柳家金語楼。「俺は水兵」という主演映画の告知ですが、目をひくのは「出演第1回オール・トーキー」というところです。サイレントからトーキーへの変わり目らしく、「オール・トーキー」が売りになっていたりしたわけです。奥付を見ると、昭和10年(1935年)1月13日発行となっております。発行所は東京宝塚劇場です。東宝ですね。

 で、まず1枚、開きますと...

 このチラシ、「日比谷映画劇場ニュース」と題され、表紙は次回の宣伝、中身は上映内容の解説というプログラムといってもいいようものでした。で、このとき(昭和10年1月13日から)上映されていたのは、米国映画の「彼女の奥手」と「百万人の合唱」でした。

 まず左ページに見えます「百万人の合唱」、ネットで調べてみますと、昭和9年(1934年)製作となっていますが、このチラシですと、昭和10年1月13日から日比谷映画劇場で上映されていたことになります。配役でみますと、伏見信子、夏川静江という方々は映画史の中では知っておりますが、いまひとつイメージが湧きません。注目は小さい字で書かれているスタッフのほうで、「円谷英一撮影」となっています。円谷英一は、あの特撮で知られる円谷英二の本名。ウィキペディア円谷英二の項目を見ますと、この映画の撮影を担当していたとありますので、この当時は本名でスタッフに名を連ねていたようです。

 で、さらに開きまして、3つ折を完全にオープンしますと...

 真ん中に「彼女の奥の手」が登場します。原題は「Parole Girl」。IMDbで検索しますと、1933年(昭和8年)製作となっています。スタッフ、キャストで知っている名前というと、ラルフ・ベラミイ(ベラミー)でしょうか。ダン・エイクロイドエディ・マーフィー主演の「大逆転」で、シカゴの商品先物市場の富豪兄弟のお兄さんを演じていた人です。若い頃はイケメンで売っていたんですね。

 で、右端のページは広告です。いつの世も化粧品は広告の王様なんですね。昭和10年のころから「クラブビューティハウス」とか言っていわけです。

 最後に、裏表紙は映画と関係ありませんが、おまけに。

 「クラブ歯磨」です。やはり今も昔も、美男美女は歯が生命だったのですね。

 さすがに、「俺は水兵」も「百万人の合唱」も「彼女の奥の手」もDVDやビデオにはなっていないようです。

 ということで、これらの映画に関係した人々の本のご紹介ということで、まずは柳屋金語楼...

柳家金語樓―泣き笑い五十年 (人間の記録 (120))

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 円谷英二は、「ゴジラ」「モスラ」から「ウルトラマン」に至るまで日本の特撮の父でもありますから、本がいっぱい出ています。
円谷英二 日本映画界に残した遺産

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定本円谷英二随筆評論集成

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 そして、ラルフ・ベラミーが差別意識丸出しの嫌味な金持ちを演じていた「大逆転」はこちらです。
大逆転 [DVD]

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