ドナルド・サザーランド初主演、ロバート・アルトマンが新鋭監督だった「M・A・S・H マッシュ」

 1970年代の米国は、ベトナム反戦運動とカウンター・カルチャーの季節で、当然、映画には、そんな時代の空気が反映されます。その代表作...

 ドナルド・サザーランドエリオット・グールド主演、ロバート・アルトマン監督の「M・A・S・H マッシュ」。1970年(昭和45年)の公開で、今はなき「丸の内東宝」のプログラムの表紙です。ブラックユーモアに満ちた反戦喜劇映画の代表作です。舞台は朝鮮戦争でしたが、当時、まだ戦闘が続いていたベトナム戦争を念頭に置いていることは明らかでした。

 スタッフ・キャスト、解説のページはこちら。

 右ページに「音楽について」とありますが、映画の開始早々流れる主題歌「もしもあの世に行けたら(Suicide Is Painless)」は、ロバート・アルトマンによる歌詞がブラックユーモアの毒に満ちている一方、「いそしぎ」の作曲者でもあるジョニー・マンデルのメロディはあくまで甘く美しく、「マッシュ」の不条理な世界に観客を引き込んでいく力を持っていました。

 で、出演者です。

 出演者の多くがこの映画をきっかけにブレークしました。その代表格であるドナルド・サザーランドはこの映画が初の主演作品。「24」のキーファー・サザーランドのお父さんで、いまや演技派の大御所のひとりですが、この当時は「特攻大作戦」など、変わった顔をした脇役といった感じでした。グールドとともに、もうひとりの主演といっていいエリオット・グールドもこの頃は今ひとつブレークしきれていませんでした。この映画をきっかけに主演級になります。右ページ上のトム・スケリットはその後、「エイリアン」の宇宙船のキャプテンになったり、ロバート・レッドフォード監督の「リバー・ランズ・スルー・イット」でブラビのお父さん役をやったりしています。

 さらに出演者を続けますと...

 ロバート・デュヴァル*1は「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」前夜です。

 で、右ページの注目はロバート・アルトマン。まだ「新鋭監督」でした。この映画で注目され、米国では異色の個性派監督の大御所へとなっていくわけです。

 そして名場面のカット

 朝鮮戦争の頃、在韓米軍の休暇は日本で、ということで、右ページ下のような日本の場面も出てきます。「ニッポン=ゲイシャ」的なお約束のパターンですが...。

 最後に裏表紙...

 Vサインと女性の足を組み合わせたXみたいな写真が、「マッシュ」のロゴみたいなものであります。

 のちにテレビ化もされた70年代の反戦喜劇映画の代表作であり、ロバート・アルトマン出世作ですから、ブルーレイにもなっています。

 リチャード・フッカーの原作はこちら
マッシュ (角川文庫)

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 テレビ化された「マッシュ」は輸入盤があるようです。
Mash TV Season 1 [DVD] [Import]

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 さて、ロバート・アルトマン監督はその後、エリオット・グールドを主演に、こんな映画をつくっています。 レイモンド・チャンドラーの傑作の映画化。エリオット・グールドフィリップ・マーロウを演じていました。好きな映画です。ついでに、その原作がこちら。村上春樹訳版で。

*1:ロバート・デュヴァル。このプログラムでは「デュボール」、このほかデュバルなど表記はいろいろ