京マチ子、司葉子、団令子、星由里子。美人女優競演の東宝映画「沈丁花」

 日本映画がまだ多少は華やかであった頃の映画という感じです。

 昭和41年(1966年)公開の東宝映画「沈丁花」。並ぶのは美人4姉妹を演じていた京マチ子司葉子、団令子、星由里子の皆様(左から)。和装もなかなか良いものです。

 表紙を開きますと...

 左ページ下の写真は、結婚式の市場面のようですが、OKマークを出しているのは小林桂樹(若い)。右手に持っているのは、8ミリカメラでしょう。ビデオの時代ではありませんね。ちょっと着物のファッションショーみたいな感じもある映画のようです。

 次のページからは主演女優陣の紹介で...

 京マチ子さんは豊満、妖艶な美人です。司葉子さんは正統派の美人で気品があります。このタイプの女優さんたちが最近はいなくなったような感じがします。

 続きまして、妹たち...。

 このあたりから時代は変わっていた感じがします。団令子さん、京マチ子さん、司葉子さんの時代の美人女優とは違います。どちらかとうと、前田敦子系といいますか。星由里子さんは、加山雄三の「若大将」シリーズのヒロインをよく演じていましたが、60年代の「都会的」イメージです。紹介写真も一人だけ和装じゃないですしね。

 さて、スタッフ・キャストです。

 「人間の條件」や「名もなく貧しく美しく」の松山善三の原作・脚本というところが売りだったようです。キャストは「上野家家系図」のところで役名の下に紹介されていますが、豪華東宝俳優陣といった感じです。加東大介杉村春子の大御所が父母で、その下に仲代達矢小林桂樹高島忠夫という布陣です。その豪華俳優陣の写真は次のページに...。

 皆さん、若いですねえ。左ページの3段目左側は高島忠夫。高島兄弟のお父さんです。この後に「撮影余話」が4ページあるのですが、その前の2ページをご紹介。

 女優の皆様の和装が艶やかです。で、面白いのは左ページの上にそれぞれの訪問着の名称と、お値段が書いてあることです。今だったら、こんな値段では済まいないのでしょうね。きっと。

 で、このプログラム、後半にもう1本、映画の解説が入っています。2本立てだったのかもしれません。で、その映画は...

 1960年代の東宝アイドルとして絶大な人気を持っていた内藤洋子の初主演作「あこがれ」です。脚本が山田太一、監督が恩地日出夫ですから、今から見れば、豪華スタッフでした。内藤洋子とコンビを組んだ田村亮が若いです。

 しかし、こうしてプログラムを見てみると、美人は世につれ、時代につれ、人々の好みはかわってきているんだということがわかります。で、裏表紙は広告です。

 このボディラインを美しく、というのは、昭和40年代も平成20年代も変わらないような気がします。

 さて、アマゾンを検索してみますと、「沈丁花」も「あこがれ」もDVDにはなっていないようです。プログラム・ピクチャーだったのかもしれませんが、何も残っていないのはちょっとさびしい感じがします。

 女優の方々の主演作品を見てみますと、京マチ子さんは...

雨月物語 [DVD]

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羅生門 [DVD]

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偽れる盛装 [DVD]

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 山のように名作に出演しています。

 司葉子さん...

 小津安二郎小林正樹黒澤明...名監督の映画にいくつも出ています。

 団令子さん...

椿三十郎 [Blu-ray]

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 星由里子さん...

 そして、「あこがれ」の内藤洋子さん

兄貴の恋人 [DVD]

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 こうして作品を並べてみると、女優さん個人の資質もありますが、それと同時にというか、それ以上に、そのとき日本映画がどんな状況にあったのかが作品に恵まれたのかどうかの分かれ目になっている気もします。映画の黄金時代に生きた女優さんたちは良い作品との出会いも多かったような。京マチ子さん、司葉子さんは同時代の中でも飛び抜けた美人という感じもしますから、名監督たちに愛されたのもわかる気もします。今、このタイプの美人女優はいないですねえ。現代は「かわいい」時代なのかもしれません。「沈丁花」のプログラムを見ているだけでも、「きれい」から「かわいい」へ、時代の変化を感じることができます。