築地小劇場、新築地劇団の昭和14年正月公演は「土」

 日本初の新劇常設劇場といわれる築地小劇場のチラシです。

 昭和14年(1939年)、新築地劇団の正月公演は「土」でした。劇場も劇団も日本の演劇界の伝説です。その存在の大きさを感じさせるように、この2つ折りのチラシの表紙には、斎藤茂吉の歌が添えられています。まさに文化です。

 表紙を開きますと...

 「土」の紹介です。原作は長塚節、脚色が伊藤貞助、演出は千田是也。4幕の芝居ですが、それぞれに出演者が紹介されています。この時代の演劇人には疎いもので、名前を見て、多少わかるのは多々良純殿山泰司岸輝子加藤嘉などといった方々です。記憶にはあるのは熟年、老年になってからですが、当時は当然ながら若手だったんでしょう。

 ちなみに、この資料、チラシというよりも公演プログラムといったほうがいいのかもしれません。タグ付けするときに迷うところです。

 さて、裏表紙は...

 なぜか、映画の宣伝になっているのですが、フランス映画の名作、「望郷」です。ジャン・ギャバン主演、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の1937年(昭和12年)作品。ウィキペディアによると、日本公開は1939年(昭和14年)2月15日となっています。第二次対戦は、この年の9月、ナチス・ドイツポーランドに侵攻して始まるわけで、まさに嵐の前の季節だったんですね、このころは。

 さて、「土」の原作はこちらです。

土 (新潮文庫)

土 (新潮文庫)

 長塚節と伊藤貞助の「土」はこれかと思われますが、戦後の本なので、この公演と同じなのかどうかは、わかりません。
土 (1953年) (青木文庫〈第151〉)

土 (1953年) (青木文庫〈第151〉)

 築地小劇場は伝説の劇場とあって、いろいろと本が出ていますが、この舞台の演出を担当した千田是也の本もあります。 新築地劇団については、岸田國士のこんな本も。 そして、最後に「望郷」はフランス映画の古典であり、名優、ジャン・ギャバンの代表作でもあるので、当然、DVDも出ています。
望郷 [DVD]

望郷 [DVD]