イアン・フレミング原作ロアルド・ダール脚色の英国製ミュージカル「チキ・チキ・バン・バン」
1968年(昭和43年)公開の英国製ミュージカルです。
「チキ・チキ・バン・バン」。日比谷スカラ座のプログラムの表紙です。「No '69〜1」とあるのは、1968年12月末公開で、1969年正月第一弾の上映作品という意味です。このプログラム、ちょっと珍しい横長のものです。映画の画面は横長ですから、こういうアイデアもあり、なのでしょう。
映画は、「メリー・ポピンズ」(1964年)と「グレートレース(1965年)といった当時の家族向けヒット作のいいとこ取りを狙ったようなマーケティング先行といったイメージのある映画でした。ただ、目論見ほどヒットはしなかったのではないかと思います。
スタッフ、キャストは、こんな感じです。
原作がイアン・フレミング。あの「007」の原作者です。製作のアルバート・R・ブロッコリは映画「007」シリーズのプロデューサー。異色です。さらに、脚本を見ると、監督のケン・ヒューズと並んで、ロアルド・ダールの名前が見えます。豪華です。
一方、音楽はリチャードとロバートのシャーマン兄弟の作詞・作曲。「メリー・ポピンズ」の作曲者で、主演のディック・ヴァン・ダイクも「メリー・ポピンズ」に出ていた芸達者な俳優さん。ヒロイン役のサリー・アン・ホウズは、ブロードウェイ版の「マイ・フェア・レディ」で、ジュリー・アンドリュースの後を継いで主役を演じていた人なので、こちらも「ポピンズ」と縁があります。
「チキ・チキ・バン・バン」は、主役の発明家がつくったもので、それに乗っている写真がこちらです。
健全な感じです。続きまして、ミュージカル・ナンバーの紹介です。
有名なのは「チキ・チキ・バン・バン」で、CMなどにも使われ、今でもよく聴きます。映画以上に、この曲のほうが知られているのではないかと思います。
007の秘密兵器ではありませんが、数々の発明品がこの映画の売りでもありました。
このあたりジェームズ・ボンドに出てくる「Q」というよりも、「グレートレース」の発明品に近い感じがしました。「チキ・チキ・バン・バン号」の解説図もあります。
自動車レースに出てくるオールド・カーも売りでした。
ともかく売れる要素を詰め込んだ映画でした。裏表紙も「チキ・チキ・バン・バン」。翼を広げています。
家族向けのファンタジー・ミュージカルとして売ろうとしたのでしょうが、1968年12月の公開というのは、ちょっと登場するのが遅かったという印象を否めません。「メリー・ポピンズ」が1964年で、「サウンド・オブ・ミュージック」が1965年。それから数年で時代は大きく変わってしまいました。例えば、1967年には「ヘアー」がオフ・ブロードウェイで始まり、映画では「俺たちに明日はない」「卒業」とアメリカン・ニューシネマが台頭し、1969年は伝説的なロックの祭典、ウッドストックとカルト映画「イージー・ライダー」の年です。時代はロックになっていたわけで、いかにも古い映画になってしまいました。サム・ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」が1968年ですからねえ。ただ、それでも、「チキ・チキ・バン・バン」は軽やかな良い曲です。
ファミリー・ミュージカルの古典のひとつであり、曲も有名なので、ブルーレイ版も出ています。
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