仲代達矢、栗原小巻、酒井和歌子が出ていた小林正樹監督の「いのちぼうにふろう」
昭和(戦後日本)を代表する映画監督というと、すぐに黒澤明という話になりますが、日本だけでなく国際的にも評価が高かった監督といえば、小林正樹を忘れていはいけません。その晩年の一作...
1971年(昭和46年)公開の「いのちぼうにふろう」。原作は山本周五郎の『深川安楽亭』です。最近の映画監督は藤沢周平がお気に入りのようですが、この時代、黒澤明も『赤ひげ』とか『椿三十郎』とか『どですかでん』とか山本周五郎の小説を映画化しています。戦後昭和の日本人の琴線に触れる小説家でした。
プログラムの表紙の女性は、栗原小巻と酒井和歌子。当時の人気若手女優でした。この映画、東宝と俳優座の提携作品とあって、俳優陣には役者が揃っています。スタッフ、キャストの紹介ページです。
中村翫右衛門、三島雅夫、佐藤慶、岸田森、草野大悟、山谷初男、中谷一郎、山本圭、神山繁...。渋い布陣です。一方、勝新太郎が顔を出しているのは、小林正樹監督の映画だったからでしょう。黒澤明監督の「影武者」では途中降板してしまう勝新ですが、この映画では、カメオ出演みたいな登場ながら、存在感を出していました。
で、小林正樹監督が、どのぐらい国際的に評価されていたかと言いますと...
1971年のカンヌ国際映画祭は、映画祭25周年記念したイベントとして、過去にカンヌで多くの賞を獲得した世界の10大監督に監督功労賞を贈りました。フェリーニ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソン、チャップリン、オーソン・ウェルズ、ウィリアム・ワイラー、ミケランジェロ・アントニオーニ、リンゼー・アンダーソンと並んで、小林正樹監督も、そのひとりに選ばれました。ものすごい顔ぶれですね。その一人なのですから、超絶リスペクトされていたのでしょう。特に欧州で愛された日本映画監督と言っていいのかもしれません。
その一方で、プログラムの解説には、こんな一節があります。
昨年七月、黒沢明、木下恵介、市川崑監督と「四騎の会」を結成し日本映画界に話題をまいた小林正樹監督が、そのトップをきり、ならず者の世界を題材にして、放つ感動の時代劇大作です。
旧態依然の大手映画会社がテレビの隆盛に抗しきれず、衰退する中で、国際的に評価の高い監督でもなかなか映画を創れない時代になっていたわけです。そんな閉塞状況の中で、この映画は作家たちが結束して自分たちで映画を創ろうとうする挑戦でもあったわけです。
最後に裏表紙です。
ちょっと暗い映画でもありましたから、残念ながら、DVDにはなっていないようです。原作である山本周五郎の『深川安楽亭』はこちらです。
- 作者: 山本周五郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1973/12/04
- メディア: 文庫
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