レイ・ブラッドベリ原作、フランソワ・トリュフォー監督の「華氏451」
レイ・ブラッドベリのSF小説をフランソワ・トリュフォーが英国で撮った映画。「華氏911」ではなくて、「華氏451」のプログラム。保存状態が悪く、かなり痛みがひどいのですが、表紙はこんな具合...
1966年製作で、日本では、アート・シアター・ギルド系の映画館で1967年(昭和42年)の年末に公開されました。表紙の女性は、ジュリー・クリスティ。後ろ姿の男性(本を燃やしに行くファイアマン)は、トリュフォーの「突然炎のごとく」にも出ていたオスカー・ウェルナーです。目次は、こんな具合...
まずは目次の内容もさることながら、その上にある翌1968年公開予定のアート・シアターのラインナップに圧倒されます。大島渚の「絞死刑」、ジョセフ・ロージーの「召使」、ジャン・リュック・ゴダールの「男性・女性」「小さな兵隊」、サタジット・ライの「大河のうた」、ロベール・ブレッソンの「バルタザール ゆきあたりばったり」(公開時は「バルタザール どこへ行く」に改題)と「ジャンヌ・ダルク裁判」。アート系名画の連打です。ただ、「バルタザール」の撮影がアンヌ・ヴィアゼムスキーというのは誤植で、彼女はヒロイン役の女優さんで、これがデビュー作。のちにゴダール夫人になります。ゴダールの「小さな兵隊」のヒロインはアンナ・カリーナで最初の夫人。奇しくもジャン・リュック・ゴダールの二番目の夫人と最初の夫人の映画が並んでいました。
シナリオが収録されているのが、アートシアターのプログラムの特徴で、アート系の映画ファンとしてはうれしい限りのですが、それとともに、ここで最大の注目は、トリュフォー自身の「華氏451」撮影日誌が収録されていることです。この内容がすごくて、もう愚痴の嵐です。特にオスカー・ウェルナーのわがままぶりに切れています。一方、ジュリー・クリスティについては「ジャンヌ・モローやフランソワーズ・ドルレアックと同じように仕事がしやすい」と手放しで評価しているところが、女性にやさしいトリュフォーっぽいところです。ともあれ、この愚痴の激しさは、英国での撮影がストレスだったためかもしれません。
プログラムの常として、スチル写真がたくさん入ってますが、フランス映画ファンとしてのお宝写真はこちらでしょう。
英国パインウッドの「華氏451」撮影現場に訪ねてきたジャン・リュック・ゴダールと、カメラの横に立つトリュフォーのツーショットです。この映画が撮影されていた1966年というと、ゴダールが「男性・女性」「メイド・イン・USA」「彼女について私が知っている二、三の事柄」を発表した年で、ともにヌーベルバーグの盟友として疾走していた時代でしょう。フランス5月革命で、ふたりがカンヌ映画祭を占拠するのは2年後の1968年で、そこから進む道が分かれていったのかもしれません。
かなりアートなSF映画ですが、DVDになっています。
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