新宿・蠍座の「ATG洋画・回顧上映」

 新宿文化や日劇文化などのアート・シアター・ギルド(ATG)系の映画館では、ATG製作・配給の日本映画だけではなく、海外のアート系作品が上映されていました。いまのミニシアターの元祖ですね。というわけで、新宿文化の地下にあったアンダーグラウンド蠍座がATG公開の洋画を集めた「続・ATGの回顧上映」のチラシです。

 「続」ということは、第1回目の上映が好評だったのでしょう。上に「ATG発足以来8年この間の想い出の名画の数々を集めて贈るアートシアター・フィルムレヴィュー!」という宣伝文句が見えます。ATGが初めて配給した「尼僧ヨアンナ」は1962年の公開ですから、8年ということは、1970年(昭和45年)ころのチラシと推測されます。で、確かに、ランナップを見ますと、アート系の名画が揃っています。裏に紹介がありまして、こんな具合...

 フランスから始まり、ポーランド、イタリア、アメリカ、イギリスと様々な作品が並んでいます。監督で言うと、アニエス・ヴァルダ、アンジェイ・ワイダフェデリコ・フェリーニ、ジョン・カサベテス、オーソン・ウェルズリンゼイ・アンダーソンジョセフ・ロージーと60年代の作家たちが名を並べています。こうした映画館はフィルムセンターの役割を果たしていたのですねえ。こうして毎週、系統だって映画が公開されるというのも、今となると、街場にアートスクールがあったという感じです。いまは、どんな映画でもBS/CSやら、DVDやら、オンラインやらで見ることができるようになりましたが、こうして編集して系統立てて見せてくれる機会が少なっているので、つい自分の好きなモノばかり食べてしまう偏食の時代になっている気もします。

 で、このラインナップをDVDで再現してみると...

I. フランス篇

5時から7時までのクレオ ~Collector’s Edition~ [DVD]

5時から7時までのクレオ ~Collector’s Edition~ [DVD]

  「5時から7時までのクレオ」はDVDになっていますが、アンリ・コルビの「かくも長き不在」はないようです。

II. ポーランド

パサジェルカ [DVD]

パサジェルカ [DVD]

 「夜の終わりに」は、アンジェイ・ワイダの作品を集めたDVD-BOXのなかに収録されているようです。「パサジェルカ」は、CSで放映されていたりしましたが、DVDにもなっていました。

III. イタリー篇

8 1/2 普及版 [DVD]

8 1/2 普及版 [DVD]

魂のジュリエッタ [DVD]

魂のジュリエッタ [DVD]

 フェリーニは晩年まで活力が衰えなかった息の長い映画作家で、日本でも人気がありましたから、2本とも、しっかりとDVDになっています。

IV. アメリカ篇

アメリカの影 HDリマスター版 [DVD]

アメリカの影 HDリマスター版 [DVD]

市民ケーン [DVD]

市民ケーン [DVD]

 このあたりは米国のアート系映画の古典ですが、監督でもあり俳優でもある2人のアーティストの作品はともにDVDとなっています。

V. イギリス篇

孤独の報酬 [DVD]

孤独の報酬 [DVD]

銃殺 [DVD]

銃殺 [DVD]

 英国映画は個人的には好きなんですが、暗いので、残っていないかなあ、と思ったら、意外なことに2本ともDVDになっていました。DVDは結構、アート系映画まで拾っているんですね。

 以上が「続・ATGの回顧上映」の洋画ラインナップですが、チラシの下の方を見ると、このシリーズ以降の上映予定も出ていて、これを追うと...

★1970年?5月15日〜6月5日 独占公開

中国女 完全版 [DVD]

中国女 完全版 [DVD]

 ゴダールの「中国女」。主演は、トリュフォー映画でお馴染みのジャン=ピエール・レオゴダール夫人になるアンヌ・ヴィアゼムスキー蠍座っぽいラインナップです。

★1970年?6月6日より独占ロングラン

新宿マッド [DVD]

新宿マッド [DVD]

犯された白衣 [DVD]

犯された白衣 [DVD]

 「若松孝二のエロチシズム・ミソロジー」なのだとか。パートカラーだそうです。このあたりの映画は新宿っぽい香りがします。