鶴屋南北の「盟三五大切を映画化した松本俊夫のATG映画「修羅」
ATGの映画のチラシです。
1971年(昭和46年)に公開された松本俊夫監督・脚本の「修羅」。松本俊夫はアヴァンギャルドな作風の監督で、この2年前、「薔薇の葬列」で長編映画デビューしました。「薔薇の葬列」は、ピーターのデビュー作でもあります。
さて、このチラシ、表紙部分はCDぐらいのサイズですが、三つ折りになっていまして、縦に開きますと...
表紙も怖いですが、中の写真も怖いです。何しろ「残酷と狂気の流血怨念劇」ですから。写真の男女の風体で時代劇であることがわかります。そして、これは伝説の映画館「アートシアター新宿文化」のチラシです。当時、前売りの映画料金は400円だったのですね。
そして、さらに開きますと...
縦長、横書きで、「かいせつ」「あらすじ」「演出のことば」、そして、スタッフ、キャストの紹介です。
ご覧のように原作は「東海道四谷怪談」で知られる鶴屋南北の「盟三五大切」。「かみかけて さんご たいせつ」とふりがなが振ってあります。ふりがながないと読めません。美術に朝倉摂の名前が見えます。アートな世界ですねえ。
そして主演は中村賀津雄。萬屋(中村)錦之介の弟さんで、後に中村嘉葎雄と改名します。このときは昔の芸名の時代だったわけですね。表紙のアップになった怖い顔の男は中村嘉葎雄さんだったわけです。ヒロインは三条泰子、共演に唐十郎。70年代の唐十郎さんですから、時代劇ですが、新宿のアートの香りがします。観世栄夫、山谷初男といった渋い方々の名前も見えます。
さて、チラシを閉じて、裏表紙を見ると...
スチル写真のモザイクです。時代劇ですが、残酷であり、エロティックという感じです。三条泰子さん美形です。歌舞伎を原作としてもATGという感じです。
ATGですし、カルトな人気のある松本俊夫作品ですから、ニューマスター版のブルーレイまで出ています。
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さて、原作のほうですが、鶴屋南北の「四谷怪談」は岩波文庫にもなっているものの、「盟三五大切」はアマゾンで検索しても、よくわかりませんでした。ただ、白水社が「現在舞台にかけられている代表的な名作の、もっともわかりやすく、信頼できるテキストを提供することを第一のねらいとし、編著者は最高の専門家を網羅、永年の蓄積をことばの注と解説・鑑賞に盛り込んでいただきました」と宣伝している「歌舞伎オン・ステージ」という全集がありまして、そこには入っていました。
盟三五大切 時桔梗出世請状 (歌舞伎オン・ステージ (9))
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日本のアートシーンを牽引していたATGが古典を映画化するのは、この映画が初めてではありません。2年前の1969年(昭和44年)に傑作が生まれていました。
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古典を現代の映画に蘇らせるというのは、ATGにとってはチャレンジングな作業だったらしく、増村保造監督も挑戦しました。
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