村山知義演出、新協劇団の昭和13年演出作品「デッド・エンド」

 発掘資料を久しぶりに引っ掻き回していたら、面白いものを見つけました。

 保存状態が悪かったので、かなり劣化していますが、新協劇団の昭和13年(1938年)3月公演「デッド・エンド」のプログラムの表紙です。A4の紙を二つ折りした簡単なものですが、注目は「村山知義演出作品」とあることです。ご存知の人はご存知だったんでしょうが、村山知義は前衛芸術家、特にコラージュ作品とイメージが強かったもので、演出までしていたとは知りませんでした。まあ、前衛芸術家の場合、あらゆる表現形態を追求するので、演劇の世界に進出しても不思議ではありませんが。

 舞台は伝説の劇場、築地小劇場。演劇史は疎いので、新協劇団については知らなかったのですが、ウィキペディアなどを見ますと、こちらも伝説的存在であったようです*1。それは表紙を開いて、出演者の一覧を見ると、わかります。

 信欣三、下條正巳北林谷栄...。小澤栄とあるのは、後の小沢栄太郎。後ろの方に滝沢修三島雅夫の名前も見えます。名優たちが勢揃いといった感じです。戦前ですから、若手だったんでしょうが、ともあれ壮観です。

 「デッド・エンド」はシドニー・キングスレーによる米国の戯曲で映画にもなっています。このプログラムの解説を読むと、当時、ブロードウェイで大ヒットしていたようです。

 この劇団、2年後の昭和15年(1940年)に解散します。というか、解散させられます。その年、村山知義滝沢修も信欣三も小沢栄太郎も信欣三も逮捕されます。戦前の政府はこうした演劇活動も弾圧したのですね。

 昭和10年代の演劇のプログラムを見ていますと、最終ページは大体、映画の広告になっています。このプログラムも同じで...

 1935年(昭和10年)製作のドイツ映画「第九交響楽」です*2。宣伝文句としては「ベルリン国立オペラ管弦団特別出演」とあります。同時上映は1931年(昭和6年)製作、ルネ・クレール監督のフランス映画「ル・ミリオン」。allcinemaによると、ミュージカル・コメディとのことですから*3、音楽映画2本立てというところでしょうか。

 さて、村山知義に関する本というと、まずはこれでしょうか。

 村山知義は自叙伝を書いているようです。
演劇的自叙伝〈3〉 (1974年)

演劇的自叙伝〈3〉 (1974年)

 作品録としては、こんなものも...
村山知義 グラフィックの仕事

村山知義 グラフィックの仕事

 
 新協劇団については岸田国士が書いてあります。

岸田国士「新協劇団を観る」(青空文庫)

 ただ、この公演に触れているわけではありません。

 さて「デッド・エンド」は1937年にウィリアム・ワイラー監督がリリアン・ヘルマンの脚色で映画化しています。ジョエル・マクリー、ハンフリー・ボガートといった顔ぶれで、なぜか日本でDVD化されています。

デッド・エンド [DVD]

デッド・エンド [DVD]

 「デッド・エンド」を書いたシドニー・キングスレーはウィリアム・ワイラーと相性が良いらしく、キングスレーの戯曲はもう1本、ワイラー監督で映画化されています。それがこちら...
探偵物語 CCP-202 [DVD]

探偵物語 CCP-202 [DVD]

 1951年製作、カーク・ダグラス主演の「探偵物語」です。

 裏表紙にあった2本の映画、「第九交響楽」は日本でもVHSになっていたようですが、アマゾンではなぜか、「おもちゃ」に分類されています。

アマゾンで検索すると、レーザーディスクが引っかかります。いまレーザーディスク使っている人、少ないだろうなあ。
第九交響楽 [Laser Disc]

第九交響楽 [Laser Disc]

 一方、「ル・ミリオン」は...
ル・ミリオン [DVD]

ル・ミリオン [DVD]

 DVDがあります。このあたりは、名匠ルネ・クレールの評価の高さということでしょうか。