黒澤明初のカラー映画「どですかでん」
「あかひげ」から5年、映画産業の衰退もあり、日本ではなかなか思うように映画を撮れず、海外と組んだ「トラ・トラ・トラ」もハリウッド流の製作方針と対立し、降板となった黒澤明は、木下恵介、市川崑、小林正樹と「四騎の会」を結成します。その第1回作品です。
昭和45年(1970年)製作・公開の「どですかでん」。黒澤初のカラー映画です。プログラムの表紙を開くとこんな具合です。
企画・製作は「四騎の会」。日本映画界を代表する巨匠4人です。原作は山本周五郎の『季節のない街』です。イラストは黒澤明です。
ページをめくりますと、スタッフ・キャストの一覧です。
脚本は、黒澤明、小国英雄、橋下忍と、数々の名作を送り出してきた黒澤組の人々です。続きまして、写真入りでキャストから一言...
昭和の名優たちがそろっていますが、そのコメント集です。「どですかでん、どですかでん」と言いながら、見えない電車を運転している(つもりになっている)「六ちゃん」役は頭師佳孝。「あかひげ」でも印象的な役を演じていました。ジェリー藤尾は「用心棒」にも出ていました。みんな黒澤明お気に入りの演技派の俳優さんたちと言っていいんでしょう。
解説のページには、黒澤明が「どですかでん」を描いた絵も紹介されています。1枚はサイン入りです。
プログラムでは、「四騎の会」の沿革についても触れています。
日本映画に対する危機感が巨匠たちを走らせたのでした。
さて、スチル写真のページには「どですかでん」の詩もあります。
原作者の山本周五郎の紹介もあります。
そして黒澤明映画の年表...
名作のスチル写真の数々...
最後に裏表紙...
この映画、興行的には失敗でした。黒澤明には「生きる」のようなドラマもありますが、やはり「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」のようなダイナミックな映画を期待してしまいます。「どですかでん」は、アクション映画でも、大作でもありませんし、色彩感覚もちょっと微妙で、黒澤映画はやっぱりモノクロ時代のほうが良かったね、みたいな感想を持ってしまう作品でした。
黒澤明は、この翌年、昭和46年(1971年)に自殺未遂事件を起こしますが、いろいろな意味で、追い詰められていたのでしょう。最近は元気な日本映画界ですが、このときは暗黒の時代、氷河期といっていいのかもしれません。
で、映画は何といっても黒澤作品であり、黒澤初のカラー映画でもありますし、DVDになっています。
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山本周五郎の原作はこちらです。
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ちなみに、「トラ・トラ・トラ」をめぐる黒澤明とハリウッド映画産業の対立は、この本で詳しくレポートされています。
黒澤明vs.ハリウッド―『トラ・トラ・トラ!』その謎のすべて (文春文庫)
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