夜の都市を暴力と性が暴走するーーそんな時代を予見したキューブリックの「時計じかけのオレンジ」
SF映画「2001年 宇宙の旅」で描いた未来は2012年になっても実現していませんが、この近未来映画はすぐに現実化してしまったようです。
1971年製作、日本では1972年(昭和47年)に公開されたスタンリー・キューブリック監督の「時計じかけのオレンジ」です。夜の都市を若者たちが暴力と性と薬とスピードと、欲望のなすがままに暴走する。主人公が朝帰りする団地も家庭も無機質に荒廃しています。道路にいる浮浪者の老人に意味もなく暴力を振るう。日本でも時折、事件になるオヤジ狩り、浮浪者狩りの世界です。40年前の映画ですが、21世紀にならないうちに次々と現実の風景になっていった感じです。ユートピアは実現しなくても、アンチ・ユートピアの世界は簡単に現実のものとなってしまうようです。ともあれ、プログラムの表紙からして、インパクトがあります。パンクです。
で、スタッフ・キャストはこんな感じです。
上のページの真ん中にいますが、この映画の主人公は何と言っても、この人です。
監督・脚本のスタンリー・キューブリックです。この映画は何と言っても、この偉大な映画作家が創り出す世界です。映画の語り口、カメラ(映像)はもちろん、美術セット、メイク、衣装、あらゆるものがキューブリック独自の世界を創り出します。1968年の「2001年 宇宙の旅」のあと、3年後に満を持して送り出した映画がこれだったわけですから、衝撃です。
で、キャストの主役は...
マルコム・マクダウェル。1968年に、リンゼイ・アンダーソン監督の「If もしも...」で反逆児を演じていましたが、世界のメジャー俳優にブレークしたのは、この「時計じかけのオレンジ」によってでしょう。反抗的で暴力的な若者というキャラクターというイメージが強烈についてしまった感じもします。しかし、不敵な面構えのマクダウェル抜きには考えられないような映画でもありました。
プログラムに「キューリブックが語る撮影うらばなしと映画論」というページがありましたので、そこもついでに...
ともあれ、人間の裏に潜む暴力と性の快楽、そして都市と精神の荒廃を描いた映画でありました。裏表紙もまたインパクトがあります。
人間を本能のまま解き放つと、こんなことになってしまうというか...。いじめ、子殺し、親殺し...。人間の暗黒部分を突きつめて描いたほうが未来を予見してしまうというところは、ちょっと哀しいところです。
キューブリックの代表作のひとつでもあるので、ブルーレイもあります。
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