ユル・ブリンナー、リチャード・ウィドマーク、ジョージ・チャキリス主演の日米合作映画「あしやからの飛行」

 1964年(昭和39年)ですから、東京オリンピックの年に公開された日米合作映画のプログラムです。

 「あしやからの飛行」ーーご覧のように、手前からユル・ブリンナーリチャード・ウィドマークジョージ・チャキリスといった豪華出演陣です。チャキリスは1961年の「ウエスト・サイド物語」で大ブレークし、63年には「ブーベの恋人」に出ていますから、人気絶頂期です。大映とハロルド・ヘクト・フィルムの合作です。よく、これだけのキャスティングができたものです。九州の芦屋基地に駐留している米軍の航空救助隊が台風で難破した貨物船の救助に向かう話をメーンに、救助隊の3人の過去が語られるという話でした。在日米軍トモダチ作戦ともいえます。

 プログラムを開きますと...

 左ページのご挨拶を読むと、敗戦から20年もたっていない頃ですから、日米合作を作り上げた日本側製作者の思いが伝わってきます。右のページのキャスト、スタッフを見ると、感動するのもわかる豪華な顔ぶれです。主演の男優3人を揃えるだけでも大変なことですが、製作者のハロルド・ヘクトは「ベラクルス」、「許されざる者」(ジョン・ヒューストン監督)、「終身犯」と、バート・ランカスターの名画を作ってきた人ですし、監督のマイケル・アンダーソンも「80日間世界一周」など大作を手がけてきた人です。脚本をみると、原作者でもあるエリオット・アーノルドは西部劇の「折れた矢」や「太陽の帝王」の原作・脚本を書いた人で、「太陽の帝王」(1963年)は、ユル・ブリンナージョージ・チャキリスが主演です。もう一人の共同脚本家、ウォルド・ソルトは、このあとに「真夜中のカーボーイ」「セルピコ」「帰郷」のシナリオを書いています。日米製作陣のご挨拶です。

 ともあれ、スタッフもキャストもハリウッドの一流どころばかりです。ここまで来ると、在日米軍の救助隊ストーリーというテーマもあり、日米政府の強力な支援があったのかな、と思ってみたりもします。大映永田雅一社長は政界の黒幕と言われたこともある人物でもありました。

 そんな政治的な思惑は抜きにして、ともあれハリウッド大スターの日本ロケということで、プログラムには、こんなページも...

 大映を代表するスターとして田宮二郎がチャキリスと並んでいる写真がありますが、この数年後、田宮二郎は社長の永田雅一と対立して、大映を退社することになります。で、永田は田宮を映画界から締め出します。まだ、映画会社が強い時代でした。でも、ユル・ブリンナーと、偉そうに握手している永田社長...、ちょっと怪しげです。

 最後に裏表紙...

 トモダチ作戦です。海猿でもあり、コード・ブルー・ドクターヘリでもあり、サンダーバードでもあります。

 DVDは輸入盤があります。

Flight from Ashiya [DVD]

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 この映画、純然たるハリウッド映画に出資して「大映」の名前を入れさせてもらったという感じなんでしょうか。合作といえば、合作なんでしょうが、出資映画といったほうがぴったりするぐらい、日本が舞台になってはいるものの、映画は純アメリカンです。