ドロップアウトはカッコいい? ピーター・フォンダ、デニス・ホッパー、そしてジャック・ニコルソンのカルト映画「イージー・ライダー」

 ファッションから音楽まで、これほど世界のポップ・カルチャーに影響を与えた映画はないかもしれません。みんな、ハーレー・ダビッドソン風のバイクに乗りたくなった、1969年製作、1970年(昭和45年)日本公開の、この米国映画...

 プログラムの表紙にある映画タイトルとしては「イージー★ライダー」。主人公キャプテン・アメリカが乗るバイクの星条旗模様のタンクをあしらってか、「・」のかわりに「★」になっています。で、表紙を1枚開くと、当時の日本がかいま見えます。

 左ページの広告の女性を見ますと、パンタロンとサファリルックがカッコ良かった時代なんでしょう、たぶん。ちょっと「オースティン・パワーズ」を思わせます。右ページのピーター・フォンダの勇姿と対照的ですが、同時代だったのですねえ。

 出演者は、こんな顔ぶれでした。

 ピーター・フォンダは、ヘンリー・フォンダの息子でハリウッドの名門一家の御曹司。デニス・ホッパーは「理由なき反抗」や「OK牧場の決斗」に出ていて、こちらも順調にハリウッド期待の若手俳優としてキャリアを積んできたのが、ふたりとも突然、ドロップアウトしてしまった感じでした。良い子だった二人が「卒業」の主人公よりもっと過激に社会からはみ出し、しかもドラッグまみれになってしまうとでもいうような時代のムードを醸し出していました。

 この映画の製作・監督・脚本と作品づくりにも携わったフォンダとホッパーは当時、既に日本でも知られる存在でしたが、この二人の変貌以上に衝撃的だったのが、ジャック・ニコルソンの登場でした。ニコルソンもB級映画に出てはいましたが、知る人はほとんどいなかったでしょう。それが、この映画では、主役ふたりを食ってしまうほどの圧倒的な存在感でスクリーンを支配し、ここからジャック・ニコルソンの時代が始まります。そんな意味で、この映画は、フォンダ、ホッパー、そしてニコルソンの映画といえます。

 そして裏表紙...

 米国版のポスターがあまりにもクールだったので、そのまま裏表紙に持ってきたようですが、ここのクレジットの文字の大きさを見ても、フォンダ、ホッパーとジャック・ニコルソンの格の違いがわかります。ニコルソンの文字が小さい、小さい。

 この映画は、アメリカン・ニューシネマの時代を代表する古典中の古典ですから、ブルーレイになっているのは当然です。

 いまだに、この手のバイクに乗っている人がいますから、この映画がもたらした文化的な影響は計り知れません。そして、たぶん、その手のバイクにまたがるライダーたちの頭の中で鳴り響いているのは、映画の冒頭、タイトルをバックにバイクで疾走する場面で流れるステッペンウルフの「Born To Be Wild」なんでしょう。というわけで、この作品、ロックの名曲も多いですから、サウンドトラック盤も定番になっています。
イージー・ライダー ― オリジナル・サウンドトラック

イージー・ライダー ― オリジナル・サウンドトラック