シドニー・ポワチエ、ジョアンナ・シムカスの「失われた男」

 1969年(昭和44年)製作の映画。ジェームズ・メイソン主演、キャロル・リード監督の英国映画「邪魔者は殺せ」(1947年の作品で日本公開は1951年)のリメイク。原作は北アイルランドが舞台で、IRAを思わせる組織の活動家が主人公だったが、「失われた男」では、これを米国に置き換え、主人公は黒人活動家。このあたりが1970年代前後の米国社会の雰囲気を映している。そのチラシがこんな具合。

 2つ折りのチラシで、右側が表、左側が裏表紙ということになる。映画とサントラ盤(レコード)の宣伝を兼ねたものと思われる。ジョアンナ・シムカスは1967年に、アラン・ドロンリノ・ヴァンチュラ主演の「冒険者たち」でブレイクし、68年には、ジャン=ポール・ベルモンドと「オー! Ho!」で共演、そしてフランスからハリウッドに進出したのだが、この映画の共演をきっかけにシドニー・ポワチエと結婚、あっさりと引退してしまう。何が起こるか、わかりません。で、2つ折りを開くと、映画と音楽の解説。

 リメイクものはなかなかうまく行かないが、この映画も、ポワチエとシムカスの結婚のきっかけになったということで記憶される映画になった感じ。そんなわけで、VHSやDVDも出ていない様子。ハリウッドの場合、キャロル・リードのような冷徹な描写はできないから、リメイクには向いていなかったのかもしれない。

 で、原作の「邪魔者は殺せ」は古典としてDVDに残っている。「邪魔者は殺せ」は、理想主義者がテロリストになり、破滅してしまう悲劇の映画と見ることもできる。舞台は1940年代の北アイルランドだが、テーマは1969年の米国だけではなく、現代に通じるものがある。

邪魔者は殺せ [DVD]

邪魔者は殺せ [DVD]