1972年夏、新宿歌舞伎町・名画座ミラノの小さなチラシ

 いまはシネコンになっているようですが、昔、新宿歌舞伎町・ミラノ座のビルの4階にあった映画館「名画座ミラノ」の小さなチラシです。

 B6サイズぐらいのチラシが3つ折りになったもので、1972年(昭和47年)8月から9月にかけての上映予定です。表紙はキャプションにある通り、クロード・ルルーシュ監督のフランス映画「パリのめぐり逢い」(1967年製作)の一場面。女性はキャンディス・バーゲン、後ろの男性はイヴ・モンタンです。3つ折りを開くと、こんな感じになります。

 メーンは「パリのめぐり逢い」で、写真は表紙と同じくキャンディス・バーゲンルルーシュ監督のインタビューも入っており、小さいながら、なかなか中身の濃いチラシです。

 で、開いたまま、反対側を見ると、こうなります。

 表紙を開くと、まず右端のページが出てくるのですが、「その昔 Play Town 新宿ある記」というコラムになっています。このあたり、名画座は趣味性の強いアートな映画館でしたから、チラシも凝っています。名画座に行くような人たちは、教養と薀蓄を競い合うインテリ趣味だったのかもしれません。

 この「パリのめぐり逢い」、同じルルーシュ監督の「男と女」と同じように、フランシス・レイの音楽がとても美しかったのですが、残ったのはサントラ盤のほうで、DVDやビデオは出ていないようです。イヴ・モンタンキャンディス・バーゲンアニー・ジラルドと役者が揃っていた映画なんですけどねえ。

パリのめぐり逢い

パリのめぐり逢い

 さて、このチラシにある名画の数々のDVD化状況をチェックしてみますと...

 1972年7月18〜31日は、ダスティン・ホフマン主演の「卒業」(表紙は「8月、9月のスケジュール」になっているんですが、リストは7月から始まっています)。

卒業 [Blu-ray]

卒業 [Blu-ray]

 8月1〜7日は、ロジェ・ヴァディム監督の「課外教授」。当時は、「個人教授」とか「課外授業」とか、大人と生徒のセクシー教授モノがヒットしていましたので、その流れから出てきたものですが、こちらはDVDになっていないようです。フランス人のロジェ・ヴァディムがハリウッドで撮ったものですが、フランス映画時代の時から見ると、パワーダウンしていたようです。

 8月8〜14日は、マクシミリアン・シェル監督の「初恋」。ツルゲーネフの文芸作品ですし、当時、人気のあった美人女優、ドミニク・サンダの映画でもあり、こちらはDVDが出ています。

初恋(ファースト・ラブ) [DVD]

初恋(ファースト・ラブ) [DVD]

 8月15〜21日は、オードリー・ヘップバーンフレッド・アステア主演、スタンリー・ドーネン監督の「パリの恋人」。これは、オードリーの代表作のひとつでもありますから、デジタル・リマスター版も出ています。
パリの恋人 スペシャル・コレクターズ・エディション<デジタル・リマスター版> [DVD]

パリの恋人 スペシャル・コレクターズ・エディション<デジタル・リマスター版> [DVD]

 8月22〜28日は、ソフィア・ローレンマルチェロ・マストロヤンニというイタリアの人気カップルの「結婚宣言」(1971年)。ローレンとマストロヤンニの映画は1960年代は日本でもかなり人気があり、「昨日・今日・明日」(1963年)とか「ひまわり」(1969年)とかは、DVDになっているのですが、この「結婚宣言」は出ていないようです。で、8月29日〜9月4日の「パリのめぐり逢い」もDVDは出ていないようなのは前述のとおり。

 最後に、9月5〜11日は、アニー・ジラルド主演、アンドレ・カイヤット監督の「愛のために死す」。こちらも女性教師と教え子の高校生というパターンの映画。これはVHSでは出ていたようですが、DVDはないようです。

愛のために死す [VHS]

愛のために死す [VHS]

 という感じで、長い歳月を経て、振り返ってみると、同じ名画座でも、並木座が今でもDVDとして残っているような古典となる映画をラインナップしているのに対し、名画座ミラノは、1970年代の視点で関心度の高い既公開作品群を選んでいたという感じがします。それぞれ個性です。

【参考】
銀座・並木座の世界 - 昭和の映画のチラシとエトセトラ => http://bit.ly/Nj2CPn