カンヌ映画祭グランプリを受賞したマルカム・マクドウェル主演「if もしも...」

 60年代末から70年代にかけては学園紛争が吹き荒れた時代だが、虚実ないまぜになりながら、エリート層が学ぶパブリックスクールでの反乱を描いた英国映画「if もしも...」も、そうした若者の反抗の映画です。1968年製作で、翌1969年のカンヌ映画祭グランプリを受賞(チラシの表紙にもあるように当時はパルムドールではなくて、グランプリといわれていた)。その余勢をかって、1969年(昭和44年)夏に日本で公開されましたた。その日比谷スカラ座のチラシ...

 監督は、「怒れる若者たち」といわれた英国の文化ムーブメントの立役者のひとり、リンゼイ・アンダーソン。主演は、マルカム・マクドウェル(マクダウェル)。この映画で注目を浴び、スタンリー・キューブリックの「時計じかけのオレンジ」で、この世代の代表的なアンチヒーロー型スターになりました。

 このちらし、2つ折りで、開くと...

 この映画が「問題作」といわれたのは、当時、最盛期の学園紛争をテーマに、それが現実なのか、登場人物たちの空想なのかは曖昧にはしていたものの、暴力的反抗をカッコよく描いていたためでしょう。話せば分かると対話を呼び掛ける校長を、一言もなく射殺してしまう。このあたりが良識派の反発を買っていたのでしょう。実際、どの国でも、学生と機動隊が衝突していた流血の時代ですから、なおさら刺激的だったのしょうが、当時の若者たちが物分りのいい大人に、どこか、いかがわしさを感じ、嫌悪していた心情を率直に表現してもいました。教育の理想郷のように思われていたパブリックスクールのいじめ的な体罰や同性愛も取り上げてました。そんなところが「激賛と反響」の背景にあったように思えます。

 で、裏表紙は...

 小脇に教科書を抱えつつ、マシンガンを持っています。激動の60・70年代の学生の反抗のポーズです。で、名門プリックスクールといえば、右上のようなファッションで、左下のようなラグビー、そして右下のように将校として国に仕えるために軍事教練もあります。左上の真ん中にいるのは校長、銃を乱射する主人公たちをも恐れず、対話を呼びかけに行くところです。今の映画だと、ここで対話して、分かり合うのでしょうが...。

 カンヌのグランプリ(パルムドール)作品ですが、DVDはないようです。「if」の形で社会的反抗の心情を描いているとはいえ、対話拒否ですから、今でも「問題作」でしょう。というか、テロが氾濫している今のほうが道徳的に許されない映画になっているかもしれません。でも、極端に表現するから、怒りとか、心情を際立たせることもできるわけでもありますが...。難しいところです。

if もしも・・・ [VHS]

if もしも・・・ [VHS]