昭和11年ながら、カラフルな「オペラは踊る」のチラシ

 戦前のチラシはだいたいモノクロなのですが、これは珍しくカラフルです。

 マルクス兄弟の「オペラは踊る」の2つ折りのチラシなんですが、表紙はマルクス兄弟だけ。ウィキペディアによると、「オペラは踊る」は1935年製作で、日本公開は1936年(昭和11年)。ですから、チラシも昭和11年のものと思われます。映画はモノクロですが、宣伝のチラシは豪華、カラー印刷。しかも、表紙は映画のタイトルを出すわけでもなく、マルクス兄弟のみ押し出す。当時の日本でのマルクス兄弟の人気ぶりが伺われます。

 チラシの右隅に書かれた帝国劇場、大勝館、武蔵野館は当時の洋画封切館。帝国劇場、つまり帝劇はいまは演劇の殿堂ですが、昔は洋画封切館だった時代があるんですね。

 これを開きますと...

 中身は2色刷りですが、ここでマルクス兄弟の新作が「オペラは踊る」ということがわかる仕掛けです。戦前ですから、横書きの文字は右から読むことになります。

 当時は封切りでも2本立てだったようで、同時上映は「噫初恋」。この映画、映画.comによると、クラレンス・ブラウン監督による1935年作品。「オペラは踊る」同様、米国公開後1年遅れの登場です。ちなみにクラレンス・ブラウングレゴリー・ペックの「仔鹿物語」とかエリザベス・テーラーの「緑園の天使」をつくった当時の名監督。原作は米国を代表する劇作家のユージン・オニールです。

 そして裏表紙は...

 こちらは「噫初恋」の紹介。ユージン・オニールの名はなく、クラレンス・ブラウンの名前が大書されています。ブラウンのほうが一般には有名だったんですね。ともあれ当時としては、カラー広告するぐらい強力な2本立てだったのでしょう。

 「オペラは踊る」は、マルクス兄弟の最高作ともいわれていますから、DVDはあります。

マルクス兄弟オペラは踊る 特別版 [DVD]

マルクス兄弟オペラは踊る 特別版 [DVD]

 「噫初恋」は日本ではVHS、DVDにはなっていないようですが、ユージン・オニール原作、クラレンス・ブラウン監督ですから、米国では古典としてDVDになっているようです。

 原題は「Ah, Wilderness」で、戦後、日本で翻訳出版された際には「あゝ荒野」となっています。
あ丶荒野 (1948年)

あ丶荒野 (1948年)