車とロックとベトナム戦争の限界まで爆走する映画「バニシング・ポイント」

 1960年代後半から1970年代にかけての米国カルチャーの中心には、自動車とロック・ミュージックがありますが、それが底抜けの明るさという風にはならなかったのは、ベトナム戦争のダークな影響が心の重くのしかっていたからです。そんな時代の米国の心象風景を捉えている映画が、こちらです。

 1971年(昭和46年)日本公開の「バニシング・ポイント」です。主人公はベトナム帰還兵の車の運び屋。デンバーからサンフランシスコまで15時間で新車(白のダッチ・チャージャー)を届けることができるかという賭けをして走りだすのですが、次第に走り続けること自体が意味を持ち始め、警察が止めようとしようが何をしようが、ひたすら爆走し、最後は...、という映画です。主人公は西へ、西へと走りますが、その先にフロンティアは存在しないーーそんなフロンティア喪失時代の米国映画でもあります。ベトナム戦争が泥沼化し、建国の理想も地に堕ちた、当時の米国の閉塞感を象徴してもいます。今の日本にもフィットする映画かもしれません。

 疾走する自動車とバックに流れるロック・ミュージックが主役ともいえる映画なので、プログラムも自動車の解説にページを割いています。

 使用されているロック・ミュージックの解説ページもあります。

 まさに自動車とロックの映画でありました。車やロックが青春の「記号」として象徴性を持っていた時代だったんですねえ。で、裏表紙です。

 1970年代のアメリカン・ニューシネマを象徴する映画のひとつであり、カーチェイスものの代表作のひとつですから、DVDだけでなく、ブルー・レイにもなっています。